はじめてのエイズ・HIV

エイズやHIVという言葉は知っているけど、どんなものかはあまり知らない。という方を対象にHIVの基礎的なことを説明します。ふれんどりーKOBEのHIVに関する記事を読んでみたけどあまりよくわからない、といった方にもぜひ読んでいただきたいと思います。

エイズとは

エイズは、梅毒や淋病などと同じ性感染症の一つで、HIVと呼ばれるウィルスが原因で、ウイルスや細菌などの遺物から体を守る力が低下し、特有の肺炎やガンなどの病気を発病し、そのまま放置すると死に至ります。

現在は、投薬治療によってエイズ発症を防ぐことは可能ですが、ウイルスを体の中から除去することは不可能で、一度HIVに感染すると一生投薬を受ける必要があります。

日本には、約27,000人のエイズ・HIV患者がいます(2016年11月)。主に若い男性に多く、特にゲイ(男性同性愛者)に多く、そこから、エイズやLGBT(性的少数者)に対する様々な社会的問題が起こっています。

HIV感染

HIVが人の体内で増殖する状態をHIV感染といいます。

HIVは、感染者の精液や血液に多く含まれていて、性行為時にできてしまう小さな性器の傷に、精液や血液が付着しウイルスが体内に侵入することからはじまります。

ヒトには細菌やウィルスなど、体内に侵入した異物などを除去し、防衛する「免疫」という機能があります。免疫は、血液中の何種類かの細胞が連携して構成されており、その細胞をまとめて免疫細胞と呼んでいます。

体内に侵入したHIVは、免疫によってほとんどが除去されますが、中には、除去されずに、免疫細胞の特定の種類の細胞に取りつき、その細胞を利用して増殖をはじめてしまうものがあります。感染の割合は数%程度と、他の感染症に比べると低いといわれています。

HIVに感染しても、エイズを発症するまではインフルエンザのような高熱が出る場合が稀にある程度で、特徴的な症状はありません。一般的に感染からエイズ発症までは5~10年程度の期間が必要で、その間は無症状のため、HIVに感染していても検査を受けなければ、自分が感染しているかどうかはわかりません。

最近では、皮膚にできものができたり、呼吸が苦しくなったりなど、何らかの異常から感染がわかる「いきなりエイズ」と呼ばれる例が増えています。

日本の感染経路

日本の主な感染経路は性行為で、HIV感染全体の80%を超えています。感染経路が複数想定される、または、はっきりしない場合を合わせると99%です。海外では母子感染や薬物使用による注射器の使いまわしなどによる感染もありますが、日本ではほぼありません。

性行為による感染の内訳で、同性間を含む場合が約65%で、残りは異性間のみです。同性間が多いように見えますが、同性間を「含む」という点で、異性・同性の両方を含んでいるため、同性間のみの性行為での感染が必ずしも多いとはいえません。

エイズ発症

感染後、HIVは増殖を続け、数年から10年程度で感染した人の免疫を無力化し、エイズを発症します。

免疫を失った人は、ウイルスや細菌、異物から体を守ることができず、様々な感染症にかかったり、日ごろから生まれているガン細胞の増殖を抑えられず、ガンを発病したりします。

治療と生活

現在でも、HIVに一度感染すると、体内から完全に除去する方法はありません。

治療は、エイズ発症の予防を目的とし、抗HIV薬(=HIVの増殖を抑える薬)を服用し、体内でHIVが増殖しないようにコントロールして、免疫を回復させます。免疫が感染していない人と同程度に戻るまでには数年を要することもあります。

服薬をやめるとHIVが再び増殖しはじめますが、HIVは、他のウィルスと比べるとウイルスの遺伝子の変化(変異)が速く、高い適応力を持っているため、薬が効かなくなる(=耐性を持つ)可能性が高く、生涯、服薬を続ける必要があります。

日本のHIV感染者は毎日決まった時間に1~2回、1回あたり2~3錠程度の薬を飲み続けます。抗HIV薬を飲むことが、HIV感染に対する社会的なストレスを患者に感じさせたり、症状がない状態でも飲み続けなければいけないなど、続けることが難しいと指摘され、服薬のストレス軽減の取り組みも行われています。

感染予防

一般的な感染予防では、ワクチンが有効ですが、HIVは変異速度が速く、ワクチン開発が追いつかず、今のところ有効なワクチンはありません。

現在、HIVの感染を予防する方法は、性行為時にコンドームを使用することが最も手軽で、効果の高い感染予防方法です。セーファーセックス(安全な性行為)といっています。但し、手やその他の体の部位で傷口に血液が付着することが起きないとは限らないため、コンドームを使うことで完全に防げるわけではありません。また、性行為の際にコンドームを使うことの難しさや、コンドームの使用が相手任せになってしまう部分があるなどの問題もあります。事実、コンドームによる予防の推進を行い続けていますが、年々感染者数は横ばいもしくは微増しています。

HIV感染者との日常生活

HIVの感染は精液や血液が傷口や粘膜に付着することで起こります。唾液や虫や動物が運んでくるようなこともありません。

したがって、HIV感染者とともに暮らす際、気を付けなければいけないことは感染者の血液に触れないこと程度で、ほとんどありません。一緒に鍋をたべたり、回し飲みをしたり、握手やハグ、軽いキスをしても感染することはありません。入浴やプールを一緒に楽しんでも感染の危険性はありません。